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SHINE A LIGHT [映画]

久しぶりに劇場で映画を観た。

マーティン・スコセッシ監督『SHINE A LIGHT』。
ローリング・ストーンズのライブの模様を撮った映画だ。

ストーンズのコンサートを撮った映画は過去にもあった。
ハル・アシュビー監督(故人)による『Let's spend the night together』(1983)は高校1年生の時に観た映画だ。昔大阪にあった大毎地下という小さな映画館で、この映画をなんと五回も観た(なぜか決まって『戦場のメリー・クリスマス』との併映だったが)。それ以来ローリング・ストーンズは、もういつも自分のそばになくてはならない、体の一部となってしまった。

ストーンズを扱った映画作品。
これは映画ファンで、なおかつストーンズ・ファンでもある者にとってはちょっと難しい。まず映画作品として客観的に評価できるものなのか。そしてストーンズ・ファンとして果たして満足できるものなのか。どちらの立場でもあるわたしにとっては、まさしく微妙なものだったのだ。

結果は、わたしにとって最高のものだった。

さすがスコセッシ監督。映像がとても美しい。
漆黒の闇との対比から飛び出す光り輝く映像が劇場全体にあふれるようだった。リハーサル風景やビル・クリントン元大統領のスピーチ、ゲスト・ミュージシャンとの共演など見所もたくさんある。またライブの合間に時折入る懐かしく貴重な映像、メンバーのコメントがとてもユニークで、いい息抜きになる。一緒に映画を観た同僚のカナダ人・Davidが大笑いしていた。やはり直接英語で理解すると違うのだろうな。

それにしても若かりし頃のミックが、「60歳になってもロックを続けていると思うか」と聞かれて、「もちろん、普通にそう思えるよ」と答えているのにはため息をついてしまった。この映画の主人公・ローリング・ストーンズのメンバーはすでにみんな60歳を超えているのだ!彼らの顔にはすっかり深いしわが刻み込まれている。しかし、体は見事なまでにシェイプアップされていて、かつてジャンキーだった頃の不健康さが微塵もないのだ。彼らが発散するその物凄いエネルギーには、ただただ圧倒されるのみだった。

そもそもストーンズは技術的に高い演奏能力をもったバンドではない。キース・リチャーズもロン・ウッドも決して超絶したテクニックがあるギタリストではないのだ。Davidが言うように「4人一緒になると、とてもいい音楽が作れる」のがストーンズの不思議な魅力だ。ただ、ストーンズの音楽は万人受けするものでもないようだ。「一体、ローリング・ストーンズのどこがいいのか?」という感想も珍しくない。確かにビートルズの音楽が誰でも受け入れられるのと比べ、ストーンズの音楽はメロディで聞かせるような曲があまりない。彼らの音楽は、アメリカの黒人ブルースをベースにしたことによる泥臭さにこそ魅力があるのだと思う。シンプルなロックン・ロールのリズムに、彼らが解釈したブルースの黒っぽいものが加わったストーンズの音楽は、独特のグルーブをともなって唯一無二のものとなっているのだ。わたしなどはストーンズの音楽を聴くと、もうどうにもこうにもじっとしていられないくらい体が反応してしまう。「ストーンズは体の一部」とは、もはや正直な感想なのだ。

演奏が終わり、舞台裏へ引き上げていくバンドのメンバーたち。
スコセッシ監督がカメラを誘導していく。
バック・ステージの闇から黄金色に輝くニューヨークの夜景へ...
見事なエンディング、SHINE A LIGHTだった。

Pretty Good,Right?

Davidもこの映画の出来に満足している様子だった。
帰り道、興奮覚めやらぬ二人は中国語と英語のチャンポンで、
熱くロックについて語り合ったのだった。






Shine a Light (Ws Dub Sub Ac3 Dol Sen)

Shine a Light (Ws Dub Sub Ac3 Dol Sen)

  • 出版社/メーカー: Paramount
  • メディア: DVD





ザ・ローリング・ストーンズ×マーティン・スコセッシ「シャイン・ア・ライト」O.S.T.

ザ・ローリング・ストーンズ×マーティン・スコセッシ「シャイン・ア・ライト」O.S.T.

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)
  • 発売日: 2008/04/09
  • メディア: CD




日本でも12月5日から劇場公開されることが決まったようです。
ストーンズ・ファンも、そうでない方もぜひ!!

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コメント 24

たいへー

私にとってストーンズは、何がいい訳ではなく、
何が悪いわけではなく、「転がる石」の如く
つかみどころのないバンドです。
ミック ジャガーのカリスマ性は認めるところですが、
私の好みの方向にいないのだろうな。(笑

しかし、今も続いている事が驚きだ。
どういうモチベーションで維持してるんだろう?
とにかく、不思議なバンドです。

by たいへー (2008-11-19 08:11) 

kumimin

こんばんは。
ビートルズは過去の人って感じなのにストーンズは今も現役!
かっこいいとか演奏がうまいっていうだけじゃない魂みたいなのがある気がします♪
もともと、ビートルズの音楽よりストーンズの方が好きなんですけどね=^^=
by kumimin (2008-11-19 19:36) 

マヌカン☆

今まで 縁がなかったんです・・・・・(--:
ミックジャガーはさすがに存じておりますが
調べてみたら「全国一斉」に12月5日劇場公開ですね。行ってみようかなと思っています。
by マヌカン☆ (2008-11-20 00:26) 

蟹道楽

鯉三さんの気持ちが、よく解ります。
大学生位まで、『ストーンズが解らない』という人達が僕にとっては不思議でした。
ストーンズの良さを説明してくれ!と言われると『良いものはいいのだ!』
『美味しいものを何故美味いか?なんて事は説明できないではなか!』としか答えることが出来ませんでした。
でも、人の嗜好は全く違うものですね。
それを考えるとやはりビートルズは偉大なのでしょうか!
でもストーンズは僕の体に染み付いてしまって、もうやめられません。
まあ、僕にとっては毎日飲まなければ耐えられないビールのような存在なのですね。
by 蟹道楽 (2008-11-20 01:11) 

花火師

ストーンズは現役であることがすごいと思っています


by 花火師 (2008-11-20 02:19) 

iharaja

私も知ってはいるし、聴いたこともある・・・
では、どんな楽曲知ってる?と質問されたら、エヘヘ(^^ゞ
でも、何故かキース・リチャーズの「Talk Is Cheap」は持ってるんだな(笑)
転がる石にも苔はつく・・・と思う。
でも、その苔も格好いいというのがストーンズの印象。
動画を観て改めてそう思いました。
スコセッシ監督は音楽を扱った映画が意外にありますね。
by iharaja (2008-11-20 05:59) 

りる

日本でも公開されるんですね!
これは見に行かなければ!
マーティン・スコセッシ監督が撮ったのなら信頼できますね。
by りる (2008-11-20 23:05) 

ふじのしん

ストーンズの音楽には触れることなくきてしまいました。ストーンズはまさしく「腰で聴く」音楽だと思うので、音楽を頭で聴いてしまう自分には取っ掛かりがなかったのかも。
それにしても60を過ぎてなお、渋い(枯れた)方向に進むわけではなく、同じスタイルを続けているというのはすごい事だし、カッコいい。
この映画は是非(劇場で)観てみたいと思います。

※スコセッシ監督はディランの映画(NO DIRECTION HOME)も撮ってましたね。ご覧になりました?

by ふじのしん (2008-11-21 00:54) 

鯉三

たいへーさん:
好みがはっきり分かれるバンドだと思います。わたしはストーンズを基準にして他のバンドを聴くことはまずなく、むしろストーンズは例外だと思っています。すっかり大金持ちになった彼らが、ここまでロックにのめり込んでいる姿は驚きですね。

kumiminさん:
kumiminさんはビートルズよりもストーンズがお好みだったのですね。嬉しいです。ストーンズはバリバリの現役ですね。古い曲を演奏しても懐メロにならないところがすごいです。

マヌカン☆さん:
二時間ほとんどストーンズの演奏なので、ストーンズに慣れ親しんでいない方にはけっこうきついかもしれないと思いました。しかし、これまでのライブ映像とは明らかに違った撮り方をしています。映画を撮るという発想が先にあって、スコセッシ監督自身が劇場を決めたそうです。つまり劇場全体が映画のための装置になっているわけです。

蟹道楽さん:
人の嗜好は違うのだという当たり前のことを、わたしは社会に出てから知りました。同時にストーンズが好きだという人たちとの共通項も発見できておもしろかったです。その共通項についてはことばで上手く説明できないのですが。
蟹道楽さんもぜひ劇場でご覧になってください。カメラの位置がとても低いので、普通のライブ映像と臨場感がまったく違っています。

by 鯉三 (2008-11-21 12:06) 

鯉三

花火師さん:
まだ新作も発表してしまうストーンズは、現役のロック・バンドの中でも存在感を保っています。本当にすごいですね。

iharajaさん:
キースのソロをもっていらっしゃるのですか!それは驚きました。
『Talk Is Cheap』はかっこいいですね。これを聴くとストーンズの音はキースのギター抜きではありえないことがわかります。
ストーンズの楽曲はベスト・アルバムで聴くよりも、ライブ・アルバムの『Love You Live』『Still Life』などから聴いたほうが、より直接ストーンズの世界に入れると思います。
スコセッシ監督は自分が好きな音楽にとても思い入れがあるようで、映画という形でミュージシャンに近づきたいのでしょうね。

りるさん:
映画、ぜひご覧になってください。
スコセッシ監督とストーンズの相性はばっちりですよ。

ふじのしんさん:
わたしが「腰で聴く」音楽はストーンズだけだと思います。最近は遅れてツェッペリンも腰で聴いていますが(笑)。他の音楽は自分のイメージの世界とかトリップ感とかでしょうか。やはり頭に描きながら聴いているのだと思います。
ディランの映画、観ていないんですよ。
ぜひ観てみたいと思っています。


takemoviesさん、まぐわささん、りみこさん、COCOさん、
nice!をありがとうございます。

by 鯉三 (2008-11-21 23:38) 

サクラコ

鯉三さんこむにちは!
ご訪問が遅くなってしまい申し訳ございません。
セサミのことではご心配をいただき、沢山の心強いお言葉をどうもありがとうございました!
セサミもラーくんたちのように、元気に成長してくれると思います!
彼女の力を信じていきたいと思います!
これからもどうぞ温かく見守っていただけたら幸いです。
よろしくおねがいいたします。
ほんとうにありがとうございました。

by サクラコ (2008-11-23 17:57) 

ミタタロウ

ローリングストーンズはあまり聴きませんが、
大毎地下劇場には高校生の時に何回か行きました。
そこで最初に観た映画は、マーティン・スコセッシが監督した、
taxi driverの再上映ものでした。
あの頃は1日中あの映画館で薄ーいパイプイスの上で映画を観ていまたこともありました。幸せな時間だったと今思います。
あれからどれぐらい大人になれたのかなあ。
by ミタタロウ (2008-11-25 00:11) 

鯉三

サクラコさん:
セサミちゃんはこむぎちゃん、きびたろうくんと一緒に暮らしていくことになるのですよね!そう願っています。
セサミちゃんは強運をもった猫だと思います。きっと、すくすく育ってくれるはずです。

ミタタロウさん:
「大毎地下」に反応していただけて、とても嬉しいです。わたしも高校時代によく通った映画館で、料金が安いのと梅田から地下道を歩いて行けるのが便利でよく利用していました。椅子が硬かったですね。友人とは「大毎地下の椅子には石が入っているようだ」とよく言い合ったものです。パイプ椅子だったのは、きっと上階の更に料金が安い毎日文化ホールのことですね。ああ、懐かしい!

そうですね。あの頃から今の自分はどれだけ大人として成長したのか。そんなこと、わたしも思うことがあります。あの頃はあの頃なりに、いろいろ世界のこと世の中のこと、そして人のことを考えていたような気がするのです。今はどうなのかな。日々いろいろ考えないようにしている自分が少し恥ずかしく思えます。

by 鯉三 (2008-11-25 01:27) 

鯉三

鰯母さん、きみどりさん、くらいふさん、nice!をありがとうございます。
by 鯉三 (2008-11-25 01:29) 

nekotaro

鯉三さん、はじめまして。
そして、nice ありがとうございます。
いやぁ、もう見られちゃったんですねぇ。
うらやましい・・・。
ついに、明日公開。
でも、公開当日は仕事でございます・・・(>_<)。
by nekotaro (2008-12-04 20:05) 

とーこ

鯉三さん、こんばんは。

ようやく今日、見てきました!よかったです~。ストーンズ好きじゃない人にも、このドキュメンタリーのおもしろさはわかってもらえるんじゃないでしょうか。ストーンズ好きにはもうたまりません。

by とーこ (2008-12-05 22:41) 

鯉三

nekotaroさん:
わざわざご訪問いただいた上、コメントもいただき、ありがとうございます。ぜひ劇場でご覧になってくださいね。これまでのライブ映像とはまったく違っています。とにかくすごい迫力です。ご覧になったら、ぜひ記事にしてくださいね。

とーこさん:
すごかったでしょー!いやー、ファンなので嬉しいのは当たり前なのですが、よくこんな映画が撮れたものだと感心させられました。スコセッシ監督は本当のストーンズ・ファンだと思います。そして映画監督としての立場も忘れず、しっかりストーンズと対峙していましたね。なかなか観られない映画だと思います。

by 鯉三 (2008-12-06 00:12) 

丹下段平

ご訪問いただきありがとうございました。
スコセッシがストーンズの魅力をしっかり押さえた作品だったと思います。インタビューも色々な時代や国のものがあり、よく見つけてきたものだな、と感心しました。
by 丹下段平 (2008-12-11 22:46) 

鯉三

丹下段平さん:
わざわざお越しくださって、すみません。
映画については最近あまり書いていませんが、他の方の映画記事はよく読んでいます。セコセッシ監督は音楽の趣味だけでなく、とりあげるテーマにも常に興味をそそられます。これからも活躍してほしい映画監督です。
by 鯉三 (2008-12-13 00:13) 

seita

CDは発売日に買ったのに、映画は機を逸しています。
『ギミーシェルター』やってくれなくてスコセッシは泣いたのでしょうか(笑)
by seita (2008-12-22 00:49) 

sowhat

nice!とコメント、ありがとうございました。
私は35年以上ストーンズを聴いてきましたが、
未だに本当の良さが分からず、のめり込むに至りません。
今回の映画には期待しましたが、途中で眠たくなる始末で
全く感性が合っていないようです。
でも映画館の音が悪かったのも事実でしたから、
BDを買ってもう一度聴き直してみるつもりです。
by sowhat (2008-12-22 22:55) 

鯉三

seitaさん:
スコセッシは「ギミー・シェルター」をなんらかの形で映画に入れようとしていたようですね。ただやはり演奏にこだわっていたと思うので、そこは残念がっていたのではないでしょうか。

sowhatさん:
音楽的感性が合わないというのは珍しいことではないと思います。そもそもストーンズの音楽は他のバンドが作り出す音楽と客観的に比べられないのだと思います。わたしの場合、スタジオでのレコーディング作品よりも主にライブを聴いています。典型的なライブ・バンドだと思うからです。また普段聴く音楽の中でもストーンズは例外中の例外で、いわゆる「ストーンズっぽい」バンドにはまったく興味がありません。音楽のクオリティを問わずに聴く唯一のバンドがストーンズなので、他のバンドと比べようがないのです。


江戸うっどスキーさん、nice!をありがとうございます。

by 鯉三 (2008-12-22 23:35) 

ももこ

この映画を観て、ストーンズのかっこよさを再認識しました。
スターは観ていて飽きない!いい映画でした。
by ももこ (2009-01-20 22:39) 

鯉三

ももこさん:
ご訪問ありがとうございます。わたしもストーンズの映像作品はたくさん観ているのですが、この映画にはぶっ飛びました。本当にかっこよかったですね。
by 鯉三 (2009-01-20 23:00) 

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