山本周五郎「樅の木は残った」 [本]
かなり以前から読みたいと思っていた一作。
新潮文庫の上下二冊(現在は上中下三冊)を買ったものの、「長編大作を読むには心の余裕が必要」とやり過ごし、1年が過ぎようとしていた時に一気に読んだ。ああ、すごい小説だ!
史実は誰も知らぬところ。
作家は史実を伝えるのが使命ではなく、ひとつのエピソードから普遍的なテーマに挑むことが本領なのだろう。頭の固い自称「歴史学者」はつまらぬ批判をなさらぬように(ちなみにわたしは史学科卒業です)。
昭和から平成という時代の世相を重ねて読むのも一興だろう。
しかし、ここに描かれている原田甲斐の人物像は、生(なま)の人間の尊さ、悲しさを永遠に謳歌し続けるに違いない。そこには時代の制約などないのだ。
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