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フェリー節 衰えず [音楽]

またしてもフェリー氏の記事を書いている。でも新譜が出たのだから仕方がない。

今回のアルバムはまったく期待していなかった。オリジナルではなくカバー。しかもまたボブ・ディラン。事もあろうにタイトルはDYLANESQUE(ディラン風!)。

なんじゃそら。

ところがこの作品、すごくいい。とてもかっこいい大人のロック・アルバムに仕上がっているのだ。元々カバーには定評のある人だった。だからそんなに驚くことではないのかもしれないけど、思わず「フェリーさん、本気だね?」とつぶやきたくなるほど力強く、そしてよくまとまっている。

ロキシー・ミュージック解散後のフェリーのソロ作品はどれも音が異様に凝っていて、聴くぶんには楽しく、そういう意味では満足できた。きっと他のファンも「次はどこまで行くのか...」と、更なる緻密な音作りに興味をそそられていたにちがいない。だがライブで演奏するとなると、新作の曲はまったく使い物にならなかった。「ベイト・ノワール」ツアーと「マムーナ」ツアーのライブへ足を運んだけど、どちらもステージ後半にロキシー時代のヒット曲が出てきてようやくバンドのノリが出てくるというパターンだった。

でも、今回のは違う。最新のライブ映像を見れば一目瞭然だ。かすれたフェリーのボーカルは精鋭のバックの演奏と絡むと凄みすら感じさせる。また、個性的な3人のギタリストの起用にはさすがセンスのよさがうかがえる。20歳のOliver Thompsonなどはビジュアル的にも異彩を放っていて、ついつい注目してしまう。このライブはぜひ生で観てみたいものだ。

ライブだけじゃなく、アルバムの出来も負けずに素晴らしい。ボブ・ディランは昨年のModern Timesで全世界にその健在ぶりを見せつけたが、英語が解せないわたしにとってディランの曲やその歌声は、夜ちょっと聴こうかなと思えるものではない。もっとも、熱心なディラン・ファンにしてみれば『ディラン風!』などと言って、大きな体をゆらゆらさせながら歌うフェリーの姿など、決して目にしたくないものだろう。しかし、フェリーはあの枯れたディランの曲さえも聴きやすく、なおかつ上質なポップ音楽に変えてしまう。その才能はすごいと思う。

アルバムの最後に、もっともハードな曲・All Along The Watchtowerを持ってきたフェリー氏。ファンとして、心地よいまでに期待を裏切られた瞬間だった。もちろん嬉しい裏切りとして。

ところで、こうやって度々自分の曲をカバーされているディラン本人は、フェリーのことをどう思っているのだろう。ちょっと気になるところではある。

 

<訂正>

ビジュアル的にいけてるオレンジ髪の若きギタリストはOliver Thompsonでした。

ディラネスク

ディラネスク

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2007/03/07
  • メディア: CD

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コメント 15

花火師

このアルバムって芋焼酎に合いますかね?
最近芋にはまってて・・・音楽聞きながら飲むのっていいですよねー
by 花火師 (2007-05-04 04:50) 

deacon_blue

☆ 確かにフェリーさんは「激しい雨が降る」で昔からボブ・ディランをカヴァーしているわけですから,御大がこの事をどう感じているか興味深いです(^o^)。
by deacon_blue (2007-05-04 07:27) 

くみみん

おはようございます。
タイトルがディラン風って(≧▽≦)b
でも、タイトルに出すぐらいなのでかなり自信ありってことですね=^-^=
by くみみん (2007-05-04 08:28) 

seita

ジミヘンはもちろん、U2のカヴァーも好きな"All Along The Watchtower"、iTunes Storeで試聴した瞬間に買っちゃいました。
by seita (2007-05-04 08:53) 

たいへー

歌詞の意味が理解できないので、
私にとって難攻不落のアーティストが、ボブ ディランです。
それをカヴァーするんだから、すごいな。
さっそく、聖書を読まなければ・・・
by たいへー (2007-05-04 09:54) 

ブライアン・フェリー ・・・なんて懐かしい。ずっとあちゃらもんから遠のいていたわたし。知らなかったとは言いえ失礼ですが、まだまだご活躍とは!これは聴かなあかんな^^;
by (2007-05-04 21:33) 

中年音楽狂

貴兄のトラックバックを公開させて頂きましたので,こちらからもトラックバックさせて頂きました。Ferryについてはご同慶の至りと言えましょう。
by 中年音楽狂 (2007-05-04 21:50) 

Buji

こんばんは。過去にディランのカバーがある事を知らなかったので、このアルバムを初めて知った時は、「Bフェリーがディランのカバー?」と意外な感じがしました。結構不思議な組み合わせですよね。

ディラン調とフェリー調の比較という意味ではSIMPLE TWIST OF FATEなどがとてもわかりやすいなあと思いました。

それにしてもタイトルとジャケットは・・・もうちょっと考えて欲しかった(笑。
by Buji (2007-05-05 00:35) 

りる

ロキシー・ミュージックのアルバムは持っているのですが、
フェリーさんの新譜が出たのは知りませんでした。
聴いてみようかな…。
ディランの曲のカヴァーといえば私にとっては、
60年代の、バーズのものが印象深いのですが、
フェリーさんがどんな解釈をしているのか興味深いです(^‐^)
by りる (2007-05-05 01:27) 

蟹道楽

お待ちしておりました。
フェリーフリークの鯉三さんはいったいどのように感じられたのだろうか?と非常に気になっておりました。
僕の場合はフェリー=ROXYとしての聴き方ですから。
正直、最初にこのアルバムを聴いた時はビックリしました。
歌い方はもちろん声さえ全く違う!
ただ、何回か聴いていくうちにぼんやりとした全体像が見えてきました。
今までのフェリーのカバーとは別ものでこれはまさしくDYLANESQUE!
僕はディランは正直いって苦手なミュージシャン(というか、英語のわからない僕に解るわけがない!)で深入りしていませんでした。
苦手なディランを心地良く聴かせてくれる!
さすが、ブライアンフェリー!
このアルバムの完成度の高さを認識しました。

僕として一つ気になるのはディランファンの方々の感想ですね。
ディランに全く思い入れの無い僕だったからこそ、ストレートに楽しめるのではないだろうか?って思ってしまいます。
by 蟹道楽 (2007-05-05 01:51) 

purimaro

ディラン風なのですね(笑)
夜な夜なお酒を飲みながら音楽に浸ってみたいです^^;
サイドバーのラー君また可愛いですね^^♪
by purimaro (2007-05-05 16:34) 

鯉三

花火師さん:
このCD、わたしは麦焼酎を飲みながら聴いていますが、芋焼酎ともきっと合うと思います。先日知人に芋焼酎をプレゼントしてもらったのですが、めちゃくちゃうまかったです。

deacon_blueさん:
いまだディランがフェリーについてコメントしたという記事を読んだことがありません。ディラン・ファンはきっと怒っていると思いますが、ご本人の感想をぜひ聞いてみたいものです。

kumiminさん:
そうですね、自信があるのかもしれません。あるいはディランのことが好きで好きで、我を忘れているのかもしれません。どちらかというと後者の方が近いのではないかと思っています。

seitaさん:
ジミヘンは知っていましたが、U2もカバーしているのですか。一度聴いてみたいです。エッジのギターがどうなっているのか、とても興味があります。

たいへーさん:
ディランの詞は簡単には読み流せませんね。本当に詩人なんでしょうね。よくこんな詞が書けるものだと感心してしまいます。確かに聖書の引用も多いので、読んでおいたほうがいいかもしれませんね(笑)。

たまさん:
もう60歳を越えていますが、まだまだお元気です。別世界の人間とはいえ、年齢だけを考えたらすごいことですよね。かっこいい作品です。ぜひお試しください。

中年音楽狂さん:
トラックバックを、ありがとうございます。
記事を拝読して驚きました。「期待を裏切る」という言葉があったからです。それこそまさしくわたしの感想だったのです。ロキシーの新作も出るとの噂があります。もう一度、期待を裏切ってほしいものですね。

ふじのしんさん:
ふじのしんさんはたしかディランがお好きだったのでは。お怒りになってはいらっしゃいませんか...ディランの元曲を知らないものには聴きやすい音楽かもしれませんが、ファンや本人(?)にとっては、こんな風にカラオケのようなノリで歌われたらどんな気分だろうかとちょっと気になります。
タイトルはフェリー本人がそれでいいようなのでよしとしても、ジャケットのデザインはひどいですよね、まったく。ちょっと無造作すぎると思います。

りるさん:
ロキシーをお聴きになるのですか!ではぜひこの作品も聴いてみてください。ただし、ディランの曲の解釈という点では唖然とされるかもしれません。まったく別物になっていますので、かなり戸惑われるのではないでしょうか。

蟹道楽さん:
やっと書けました。何度も書き直して結局最後は一度全部削除してからあらためて書き直しました。でも、やっぱり満足していません。音楽について書くのは難しいです。

前作のオリジナル・アルバム『FRANTIC』と同じような歌い方になってますね。声も違います。最初は「ついにここまで声が出なくなったのか!」と悲しい気持ちにさせられましたが、結果的にはこの唱法が成功しているような気がします。

音の面では、「ヒューヒュー」という効果音が減って、フェリーさんもいよいよ作り込んだ音に飽きてきたのかなという印象を持ちました。イーノが参加した曲も控えめでしたし。そういう点で、今フェリーとイーノは気が合うのかもしれませんね。

ディラン・ファンはやっぱり怒っていると思いますよ(笑)。これはもう完全にフェリーの歌になってしまってますし、許せないのではないかと思います。

Balloonさん:
毎日聴いているので、つい深酒してしまいがちです(苦笑)。
サイドバーに気づいていただいて、ありがとうございます。
時々変えていきたいと思っています。
by 鯉三 (2007-05-05 23:51) 

iharaja

「All Along The Watchtower」かっこよかった。
ディランにしてもロキシー・ミュージックにしてもちょこっとかじっただけです。
でも、いいですよね。渋いロッカーは好きです。
音楽を聴くときはそんな乗りです(笑)
by iharaja (2007-05-07 23:21) 

taney

こんにちは。
「零細社長のブログレッシブ日記」をやってますtaneyです。
コメントを頂戴しておきながら、お礼遅れましてすいません。長らく、ブログ見てませんでした、申し訳ありません!

ボクはディラン・ファンですが、今は違和感なく楽しんでます。友人の、ボク以上に熱烈なディラン・ファンも、結構、楽しんできいてます。

別に怒ってませんよ~! というか、だいたいディラン本人が自分の昔の歌をムチャクチャにして歌ってるし。慣れました。実は私も時々、ライブハウスなんかで歌ってますが、元歌をメチャクチャにして歌ってるし。

というわけで、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
by taney (2007-05-08 15:17) 

鯉三

iharajaさん:
かっこよかったでしょ!大人の雰囲気でいっぱいですが、とても熱いステージですよね。わたしも今はこういうのがかっこいいと思っています。

taneyさん:
ご訪問、ありがとうございます。トラックバックもありがとうございます。わたしの薄っぺらなアルバム評が、これでしっかり補強できました。とても満足しています。
そうですか、ディラン・ファンは寛容に受け止めているのですね。確かに元歌通りに歌ったら、ただの物真似ですよね。曲の(歌の)解釈はそれぞれ違っていて当たり前だし、そこが音楽の奥深いところだと思います。

こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
by 鯉三 (2007-05-08 21:28) 

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