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重い読後感 [本]

自分と同世代の作家に柳美里と角田光代という女性の作家がいる。
どちらも気になる作家で、新作・旧作を問わず乱読している。
二人の作家の間に共通点があるのかどうかわからないが、
読者として感じるのは、どちらの作品も読後に「ああ...」という重い余韻が後を引くことだろうか。
決してさわやかな気持ちにはならない。

もともと、さわやかな読後感を求めていないので、こちらとしては一向に構わない。
本を読んでいる間は作品の中に入り込みたいし、全身で受け止められる作品と出会うことを願っているので、この重い余韻は自分にとってマイナスに作用することもない。

柳美里の『声 命四部作 第四幕』をようやく読み終えた。
林真理子をして、「書くことで落とし前をつけている」と言わせる作家である。
現実と丸裸で向き合う柳美里の凄さ。書くことへの執念。
ひとつひとつの言葉が痛いほどに読者の内面にも突き刺さってくる。
作品を書き終えて筆を置く瞬間の作者のため息が伝わってくるようで、こちらもため息をつくしかなかった。

声―命四部作〈第4幕〉

声―命四部作〈第4幕〉

  • 作者: 柳 美里
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫


角田光代の本も最近読み終えた。
『対岸の彼女』を読んだ後、『真昼の花』『空中庭園』『夜かかる虹』と立て続けに読んでいる。
柳美里とちがって、角田光代が向き合う対象は同性の女性であることが多い。
それもかなり厄介な相手として描かれている。
同性であるからこそ分かり合えるという考えはここでは成り立たない。
相手を理解できるからこそ、近づくことを拒もうとする姿勢とでも言うべきか。
反対に男性は最初から違うものとして扱われているのか、軽く描かれることが多い。
わたしは男性であるが、むしろ角田光代が向き合う女性たちに興味がいく。
なぜだろうか。
やはりそこに、人とのコミュニケーションの難しさとその中で生きていくという、誰もが背負わなければいけない命題があるからなのだろう。


対岸の彼女

対岸の彼女

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/11/09
  • メディア: 単行本

夜かかる虹

夜かかる虹

  • 作者: 角田 光代
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 文庫


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コメント 2

takepii

重い読後感・・・。わたしもいつも重松清さんの作品を読んだ時、たまにそう感じます。爽快な気分になりたい時は楽しい本を読み、どっぷりはまりたい時にはそういう本を読み・・・。本のステキさは語りつくせないものがありますね。
by takepii (2006-04-13 00:02) 

鯉三

takepiiさん:
重松清の小説、愛読しています。
個人的には、角田光代と少し共通点があるのかなと思っていますが、
評論家じゃないので、一読者として本を読むことに徹しています。

本のステキさ...
本当にそうですね。
今はどんな情報も一瞬で手に入るのに、わざわざ小説をじっくり読んで何かを探すというのは、一体なんなんでしょうね。
by 鯉三 (2006-04-13 01:13) 

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