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猫は小説よりもブログなり [本]

保坂和志さんの小説に、一時はまりました。

保坂さんは芥川賞も受賞している著名な作家ですが、どうもうるさい小説ファンの間では評判がよくありません。「これのどこが小説なのか?」「結論はなんなの?」という感想をよく聞きます。同業の作家からも厳しい批評があるようです。わたしの好きな作家・車谷長吉さんなどは、当時ご自身の作品が有力な芥川賞候補になりながら、結局保坂さんに賞がわたったことを今も恨んでいると作品の中で書かれているくらいです。実際、車谷さんと保坂さんの小説世界はある意味対極にあります。ですから、車谷さんのこのやっかみは結構ユニークで、多分に芝居がかっているところもあるのですが。

保坂さんの小説で特に好きな作品は、芥川賞を受賞した「この人の閾(いき)」と、「プレーンソング」「草の上の朝食」です。この三作は、自分が20代だった頃の平凡な日々の生活に通じるものがあります。

 

ところで、保坂さんは大の猫好きであり、猫との生活を扱った作品も数多くあります。猫好きのわたしは、もちろんそれらを読んでみましたが、なぜかあまり心に引っかかりませんでした。

それよりもブログを通して、うちの愛猫・ラーだけでなく、よそ様の猫ちゃんの一挙手一投足を眺める方が楽しく思えます。やはり、愛する猫とはリアル・タイムで共に過ごしたいという飼い主の願いがそこにあるからでしょうか。

 

「あまり心に引っかからない」などと言ったものの、やはり保坂さんの“猫もの”は同じ猫好きの方にお勧めしたいと思います。特に『生きる歓び』は、我がラーとも重なるところがあって感情移入してしまいました。猫を愛する作家の熱い思いが伝わる作品です。

ところで、ブログを休んだ間に読んだ本は、故・田中小実昌氏の『上陸』でした。保坂さんが、コミさん(田中小実昌氏の愛称)のことを慕っていたと作品の中で語っていらっしゃったので読んでみました。混乱した時代の空気と少し才気ばしった作家の感性が縦横に絡み合った小説群でした。

コミさんの風貌は今でも鮮烈に覚えています。最近、臓器移植問題でニュースによく登場する万波医師によく似ているなあと思うのはわたしだけでしょうか。


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コメント 25

保坂和志さんという作家は知りませんでした。
鯉三さんの紹介文からさっするとちょっと読みにくい(?)作家さんなのでしょうか^^;まして伊集院静ファンのわたしには、読み進みにくいかな・・・^^  でも、「生きる喜び」は猫さん話しなのですね、読んでみようかな
by (2006-11-09 17:20) 

鰯母

鯉三さんの読んでいる本はどれも高尚な感じがします。
見習って読んでみようと思います。
本と一緒にいるラーくん、とても賢そうですね。
そういえば吉本隆明さんも猫のエッセイ(だったかな)書いて
ましたね~。
by 鰯母 (2006-11-09 18:47) 

purimaro

こんばんは!出来れば猫を飼いたい猫好きな私としては気になる本ですね、
ご紹介ありがとうございます^^ついこの間読んだ小説では、
内田 百けんさんの「ノラや」が猫好きの私にはたまらない一冊でした!
古き良き昭和の時代背景もうかがえる、ほんのりとした気分でした^^
by purimaro (2006-11-09 18:53) 

coco030705

こんばんは。
猫ちゃんのブログはどれもかわいくて、心が和みますよね。
保坂さんの『生きる歓び』、機会があったら読んで見たいです。
最近は、本もなるべく速読してたくさん読みたいと思っています。
by coco030705 (2006-11-09 19:17) 

保坂さんの小説は私もはまりました。
『猫に時間の流れる』という小説が好きでした。猫がホトホト歩いている・・・そんな始まりだったような・・・
by (2006-11-09 21:54) 

ぶなねこ

私も人様のブログでねこ欲を満たしています(^^;
ラーくんってカメラ目線、よくくれますね~
野良たちはこぞってカメラから目を逸らしますよ…(T_T)
by ぶなねこ (2006-11-09 21:55) 

花火師

保坂さんの本読んでみます。
田中さんと万波医師・・・恐ろしく似てる。
ニットキャップかぶってほしいかも・・・
by 花火師 (2006-11-10 00:07) 

Buji

大好きな物事を表現するのに、思ったら直ぐに書いて公開できるブログというのはチカラがあるなあと思います(写真付きというのも大きい)。ものすごく気合の入った記事などに影響されてしまう事が結構あります。
そういえば作家で猫好きって多いですね。思い込みかもしれませんけど・・。
by Buji (2006-11-10 00:55) 

鯉三

たまさん:
保坂さんの小説は決して難解なものではないし、使っている言葉もやさしいものばかりです。じゃあ、読みやすいかというと...それは難しいところですね。ごく簡単に言ってしまうと、起伏に富んだストーリーを追って、その中に読者が入っていくタイプの小説ではないのです。あまりにも個人の日常を描きすぎて、読み手が退屈してしまう可能性が大だと思うのです。でも、一度読んでみていただけると嬉しいです。

鰯母さん:
高尚だなんて、とんでもない!これは単純に趣味の問題だと思います。例えば宮部みゆきのような稀代のストーリー・テラーの小説を読む醍醐味と、とても平凡でしかも私的な話が作者自身の口から淡々と語られる小説のどちらかを読むかだと思うのです。ちなみにわたしはどちらも好きです。吉本隆明も猫の本を出してますね。おっしゃるとおりエッセイだったと思います。

Balloonさん:
内田百閒の「ノラや」は泣きながら読みました。
思い出しただけで、また泣けてきます。
おっしゃるように、描かれている当時の雰囲気もいいですね。

ココさん:
本を読むのがこんなに大変なことになるとは思いませんでした。
わたしは通勤時間の読書が圧倒的に多かったのです。少し長距離だったので、それはそれは貴重な時間でした。今の生活は、時間の使い方をどこか間違えているような気がしてなりません。

linmeiさん:
ああ、保坂さんの小説を読まれていましたか!『猫に時間の流れる』は当時なぜか読むことを避けたのです。飼っていた猫が死んでしまったことも関係があったと思うのですが。今なら読めそうかな。

ぶなねこさん:
わたしもブログを始めて、「ねこ欲」なんて言葉が普通に使えるようになったことに、びっくりしています。ラーのカメラ視線、すごいでしょ!呼ぶと必ずこっちを見てくれるのです。

花火師さん:
ああ、コミさんのことを覚えていらっしゃいましたか。花火師さんはわたしより少し先輩だから、当然と言えば当然なのですが。あの帽子姿、わたしには結構胡散臭く見えて、実は苦手だったのですよ。

ふじのしんさん:
ブログの写真が果たす役割にはものすごいものがありますね。
こういったブログでのコミュニケーションで、写真がどれだけ双方の距離感を狭めたり遠ざけたりしていることか...
わたしも、作家は圧倒的に猫派が多いと思っています。それは十分に根拠があることだとも思います。
by 鯉三 (2006-11-10 01:28) 

くみみん

こんばんは。
私は猫好きの作家と言うと内田百閒さんや中島らもさんを思い浮かべてしまいますが、保坂さんもそうだったのですね。
田中小実昌さんのイメージと言えばあやしい帽子かな?
by くみみん (2006-11-10 02:08) 

鯉三

kumiminさん:
猫好きの作家、わたしもすぐに思い浮かべる人はkumiminさんと同じでこの二人です。でも、他にもかなりいますね!向田邦子、村松友視、阿部昭、写真家の荒木経惟、そして漫画家の赤塚不二夫...作家という仕事の性質上、猫と接することが多くなるのはよくわかる気がします。
by 鯉三 (2006-11-10 02:29) 

さなえ

私はブログは、カメから入ったのですが、
飼育の仕方を習うために、
自分でぶろぐを初めて、ねこさんのブログに入りました。
すると、うちのねこずに対する興味も深くなってる気がします。
皆さん感謝です
by さなえ (2006-11-10 03:51) 

たいへー

2匹の怪獣に振り回されている私は、
動物を飼う心の余裕がございません!(笑
心のゆとりが出来たなら・・・と、思っております。
by たいへー (2006-11-10 08:07) 

きみどり

「小説よりblog」というお話に納得です。
私は生き物たちの写真も、blogで見るのが大好きなのです。
自然の中で生きている生き物もステキですが
ヒトに愛されて暮らしている生き物はまた違った魅力があって、
専門書や動物園では見られない表情が見られるので楽しいです^^
by きみどり (2006-11-10 09:40) 

サクラコ

わたしも読んでみます。読書の秋にしよう!
by サクラコ (2006-11-10 12:22) 

溺愛猫的女人

こんにちは 鯉三さま「生きる歓び」さっそく読んでみたいと思います。ご紹介ありがとうございます(=^ー^=)/

私の好きな作家で一番の猫好きは故開高健さんです。
猫をテーマにした小説はないのですが、随筆の中でご自分の猫好きを語られていました。
最後に溺愛されていた猫が亡くなった時、はく製にし手元に置かれたというのはちょっと共感出来ませんでしたが…。

今回の台湾は「千と千尋の神隠し」世界の舞台になった九分に行き茶藝館でゆっくりお茶を味わおうと思っています。
夜は龍山寺近くの華西街観光夜市で屋台を食べ尽くし、時間があれば迪化街で花茶・ドライフルーツ・乾物を物色するつもりでいます(=^ー^=)小籠包、四神湯で鯉三さまのお勧めお店があればぜひご紹介下さいませ(_ _)
by 溺愛猫的女人 (2006-11-10 15:42) 

鯉三

さなえさん:
そうですね。わたしも猫のことについて、ブログで教えられることが多いです。おかげで、ラーのことにもいろいろと気を使えるようになりました。わたしも皆さんに感謝です。

たいへーさん:
たいへーさんは、ペットといえどもしっかり責任をもって接することが大切だとわかっていらっしゃるのですね。

きみどりさん:
大切にされている生き物は見てすぐわかりますね。
ブログでいろんな生き物に出会えてとても楽しいです。
彼らの表情や仕草で癒されています。

サクラコさん:
あまり期待しないで読んでみて下さい。小説は合う合わないが必ずあると思いますので。読書の秋は楽しみたいですね。

溺愛猫的女人さん:
開高健さんの小説は好きで、過去にいろいろ読んだのですが、エッセイはまだ読んだことがありません。そうですか、やはり開高さんも猫好きだったのですね。剥製...そういう例を他にも聞いたことがありますが、わたしも共感できません。それって、絶対だめですよね。

九份へ行かれるのですか。すっかり観光地になっていますが、お茶を飲むのにはいい雰囲気のところですよ。イモの団子もおいしいです。
小籠包は鼎泰豊でなければ、京鼎樓をおすすめします。
http://www.taipeinavi.com/food/restaurant.php?id=24
四神湯はわたしはちょっと苦手なので、よく知らないのです。すみません。台湾旅行、どうか楽しんでくださいね。
by 鯉三 (2006-11-10 18:37) 

iharaja

濃い読書時間を過ごされたようですね。
私も本は好きです。もっぱらミステリですが。
ところで、台湾ではNHKの衛星放送を見ることができますか?
日本時間の12日(日) 前1:10~2:28から
BS2で「JAZZ SEEN/カメラが聴いたジャズ」があります。
ジャズ・プレーヤーのレコード・ジャケットを手がけたウィリアム・クラクストンの半生のドキュメンタリーだそうです。
番宣を見ていて鯉三さんも見ることができるといいなぁと思いましたよ。
by iharaja (2006-11-11 03:53) 

鯉三

iharajaさん:
おはようございます。
NHK衛星の番組を教えていただいて、ありがとうございます。
前に住んでいた家ではBSが受信できるアンテナを取り付けていたのですが、今住んでいるところは立地条件から受信できないのです。NHKワールドプレミアム(海外放送)では、この番組が組まれていないようでした。残念です。
by 鯉三 (2006-11-11 07:56) 

溺愛猫的女人

鯉三さま ご紹介頂き本当にありがとうございました。
いも団子も楽しみです(=^ー^=)/
by 溺愛猫的女人 (2006-11-11 11:36) 

hinagorogoro

保坂和志さんの本は読んだことがありませんでした。
食べ物も本もあまり好き嫌いがないので
ぜひ読んでみたいと思います。
写真のラーくん とっても知的に見えますね(^^)
by hinagorogoro (2006-11-11 14:04) 

okinawa-fan

保坂さん、まだ読んだことがないので、読んでみようかと思います。
猫といえば、先日「のりたまと煙突」(星野博美著・文芸春秋)も猫好き
にはうーんわかる、という内容のエッセイでした。あとは、ご存知かもしれませんが、岩合さんというカメラマンの猫の写真が大好きで、よくカレンダーを買います。のら猫がメインなのですが、猫の威厳まで写してくれる写真家さんです。
by okinawa-fan (2006-11-11 21:27) 

鯉三

溺愛猫的女人:
いえいえ、「なんでも聞いてください」みたいに書いておきながら、全然お力になれなくて申し訳ありません。かなり台湾について調べていらっしゃるようですね。

hinaさん:
linmeiさんが書いていらっしゃった『猫に時間の流れる』も新潮文庫ですので、こちらを読んでみられてもいいのではないでしょうか。そうですね。ラー、なかなかキリッとしていますね。

okinawa-fanさん:
そのエッセイは知りませんでした。アマゾンで調べてみます。岩谷さんの写真集は台湾の書店にも並んでいます。よく立ち読みしています。来年のカレンダー、どんなのにしようかと思うと楽しくなりますね。
by 鯉三 (2006-11-12 01:23) 

蟹道楽

はじめまして!
蟹道楽です。ご訪問頂きありがとうございます。
鯉三 さんは大の猫好きのようですね。
僕も犬や猫は大好きですがどちらかと言えば犬派かな?
猫も好きですが、最近近所の猫の糞害に悩まされております(笑)
現在は台湾にお住まいとか。
行きたいと思いながら台湾には行った事がありません。
これからもよろしくお願いいたします。
by 蟹道楽 (2006-11-12 01:49) 

鯉三

蟹道楽さん:
ご訪問いただき、ありがとうございます。
猫の糞害...これはなんとしても解決しなければいけない問題です。特に猫を飼う人にとっては絶対あってはいけないことです。野良猫であっても何らかの方法があるはずです。動物と付き合うことはすべて人間の責任問題だと思っています。
by 鯉三 (2006-11-12 22:15) 

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